概要
人物
全般
インスティチュートの研究所で働く科学者の一人。アラン・ビネーの実子であり、父と同様、人造人間に対して同情的な立場をとる人物である。
人造人間の解放
リアムは父アラン以上に人造人間に対して同情的な考えを持っており、独自の判断で極秘裏に人造人間の解放を行っている。無論、リアムは、他の協力者のようにレールロードと協力関係を結んでいるわけではない。
主人公がレールロードのメンバーとしてリアムと出会った場合、リアムは感銘を受けて協力を申し出るが、リアムはただ人造人間に対して同情的なだけであり、インスティチュート自体の解体は望んでいない。また、デズデモーナが指摘したとおり、インスティチュートと戦ってまで人造人間を解放したいという意志もない。
その為、レールロードのクエストラインの最後にある「The Nuclear Option」にてインスティチュートを壊滅させた場合は、主人公とリアムの双方にとって悲しい結末が待っている。
リアムの誤算
レールロードの最後のクエスト「The Nuclear Option」を完了してしばらく後に本部を訪れると、デズデモーナからリアムが死亡したことが告げられ、一通の手紙が渡される。そこには、主人公に対するリアムの恨みが綴られており、その内容に当惑したプレイヤーも多いことだろう。ここでは、あくまで推測の域であることを承知の上、リアムの誤算の本当の原因を考えてみたいと思う。無論、これは無数にある解釈の可能性の一つとお考えいただきたい。
リアムはその手紙の中で、主人公がインスティチュートを破壊したこと、彼の親しい人物を死に追いやったことに焦点を当てて痛烈な非難を展開している。確かに、自分が生活する世界が破壊されたこと、家族や友人を失ったことによる喪失感は計り知れないものだろうし、主人公が引き起こした結末は予想だにしない惨事だったに違いない。その点に関しては心中察するに余りある。また、破壊を引き越した張本人達に反論の余地はないだろう。しかし、リアムは重要な点を見落としているように思われる。
「Underground Undercover」の中の会話で本人が明言しているとおり、彼の人造人間解放は当初ハッキングの力試しとして行われたものであった。その後、人造人間に対して同情的な感情が芽生え、本格的な解放活動を始めるに至った。ここまでの心の動きに問題はない。重要なのはここからである。
彼はインスティチュートに所属する人間であり、その生活はインスティチュートの施設によって守られている。セキュリティへの不当な侵入と人造人間の無断解放は、自分が所属するインスティチュートに対する重大な背信行為である。また、万が一、発覚するようなことになれば、彼が愛していると嘯く父アランもその罪に連座して何らかの苛烈な懲罰を受けていたかもしれないのである。
また、「Plugging a Leak」では、事態の真相を突き止めた主人公に追及されても軽薄な応答をし、人造人間の不審な失踪に感づいたSRBのジャスティン・アヨを排除する為に、ハッキングを駆使して彼を陥れるというような計画をサラリと提案してくる。確かに、ジャスティンは視野が狭く横柄な態度が目につく朴念仁だが、職務には忠実な人物であり、無実の罪で失脚させるのは明らかに過剰防衛である。
ハッキングの力試しなどと言っているが、例えば鍵職人が力試しで他人の家の錠前を外して侵入し、何も盗まなかったと主張したところで許される社会などないように、仮に正当な理由を挙げてみたところで、良いことを行っているのだから許されるというものではないのである。社会のルールにおいては、目的が手段を正当化することはできない。そして、彼はレールロードのメンバーとは異なり、インスティチュートという「社会」に属しているのである。
また、ただでさえ父がSRBに目を付けられているにもかかわらず、父にも内密で人造人間の解放を続けているあたりも、危機感が根本的に欠如していると言わざるを得ない。自分の背信行為が原因で父や自分が追及を受けているにもかかわらず、その責任者を陥れて対処しようとする考え方には一般的な倫理観が欠如している人間の奇妙な違和感をも感じる。通常の人間の感覚なら、(都合の) 悪い奴だ (と思う) から陥れてやればよいということにはならないのである。
つまり、彼は初めてハッキングの腕試しに人造人間の解放を始めた時から身勝手にも組織と家族を危険に晒して続けていたのである。下手をすれば、SRBによって事態を追及され家族共々処刑されていたかもしれない。だからこそ、イヴは母親として命を賭けて守ろうとしたのだが、当の本人がそのことを全く自覚していなかった。また、身を守る為とはいえ、いざとなれば、他人を平気で簡単に陥れられるということは、彼が自分の行動を客観的に認識する力と責任能力を欠いていた証左でもある。
そもそも組織に所属しながら、組織の根底を揺るがす活動を行い、その行き先に平和的な結末などあるはずがないことは誰の目にも自明である。仮に、レールロードにとって不利な活動を行うレールロードのメンバーが存在するとし、そこにインスティチュートやB.O.S.が付け込んでくる事態を想定してみれば、リアムの思考が如何に矛盾しているかが判る。
もし、リアムが死亡することなくレールロードに迎えられたとしても、その無責任な性質が矯正されなければ、力試しになんでも屋のトムの端末をハッキングしてみたり、方針が気に入らなければ組織に居座りながら独断で背任行為を行い、組織ひいては仲間をも危険に晒した可能性を否定できないだろう。このような行動の代償は、往々にして自身または組織の破滅、或いはその両方であると相場は決まっているのである。
また、レールロードが人造人間のような不幸な存在が今後生み出されないようにその母体である組織 (インスティチュート) の壊滅を目的としているのに対し、リアムは生み出された人造人間の中から脱走したい者に協力するだけで、インスティチュートが人造人間という不幸な存在を生み出し続けているということ自体に対しては驚くほど無頓着である。そして、皮肉なことに人造人間を生み出しているのは彼の父が管理する部門なのである。
無論、パトリオット (リアム) を利用してインスティチュートの壊滅を目論むレールロードも、倫理的な側面から考えれば、リアムと大差ないかもしれない。いや、リアムより罪が重いだろう。インスティチュートに潜入して内部から破綻させ、結果として重大な破壊を引き起こすのだから倫理的には重大な「悪」である。しかし、リアムとは決定的な違いがある。それは覚悟であり、認識である。少なくともレールロードのメンバーは、主人公を含め、命を賭して解放活動を行っている。また、それがどれほど危険なことかも認識している。
もし、リアムが、いざとなればインスティチュートとの決別も辞さない、いざとなれば地上での生活も辞さないという覚悟と、人造人間の解放という活動がどれほど危険な活動であるかという認識を持っていれば、恨み言を綴って自殺するような結末にはならなかったはずである。(※デズデモーナから受け取るリアムの手紙のオリジナル名は「Patriot's Suicide Letter (自殺の遺書)」であり、逃げ遅れて迫りくる死の危険の中で恨み言を書き記したわけではない)
デズデモーナがこの手紙を発見して内容を目にした時、自分が推測した通りの人物だと思ったに違いない。デズデモーナは当初からインスティチュート打倒計画において、パトリオット (リアム) には覚悟と気概がないことを看破し、彼を重用しなかった。だからこそ、造反人造人間のリーダーZ1-14と連携をとるように指示していたのである。
一方で、デズデモーナから見れば、(おそらく) 子供か甥ほど年が若いこの青年を心から憐れみ、その死に心を痛めたはずである。そしてせめてもの弔いとして、彼に「レールロードの英雄としての死」という栄光を与えたのだろう。もちろん、レールロードの大義の為に彼を犠牲にしたことに対する贖罪の意味も含まれている。
デズデモーナが読後にリアムの遺書を破棄するように伝えたのは、彼の遺書が衆目に触れることが、主人公やデズデモーナはもちろん、リアムを英雄視するレールロードのメンバー、そして何よりリアム自身にとって、リアムという人間を貶める意味しかない持たないことを十分に認識していたからに違いない。語りえぬものについて沈黙することもまた配慮なのである。
写真
基本情報
データ | |
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オリジナル名 | Liam Binet |
性別 | 男性 |
不死属性 (Essential) | なし |
所属・組織 | インスティチュート |
ロケーション | インスティチュート |
商取引 | 不可 |
医療行為 | 不可 |
素材注文票取扱 | なし |
仲間・同行 | 不可 |